優勝カップを掲げる伊澤利光（ＪＧＡホームページより転載）

伊澤利光がプロ初優勝を完全Ｖで飾る

　霞ケ関ＣＣで４度目の開催となったが、東Ｃ（6995ヤード、パー71）では戦前の1933年以来62年ぶり２度目と、60回目の区切りの大会にふさわしい舞台になった。
　第1日、伊澤利光（当時登録名伊沢）が４アンダー67をマークして首位に立った。１打差２位につけたのがコースと縁がある湯原信光。日刊スポーツ紙によると「ティーショットがよかった」と、ラフに入れたのはわずか２回。深いラフのセッティングをかわした。1993年シーズン前にスキートレーニング中に痛めた左ひざがようやく回復してきたという。ジュニア（日大桜ヶ丘高）時代に２連覇した日本ジュニアでアマのコース記録67をマークした相性がいいコース。「アドバンテージはあると思う」と話した。
　第２日、伊澤がスコアを１つ伸ばして、通算５アンダーで首位を守った。最終18番でグリーン手前からのアプローチが直接入るバーディーを決めた。日体大在学中から尾崎将司門下に入り、スイング改造するなどしてきた。プロ７年目の初優勝に向け「逃げるゴルフはしません」と話した。
　大会最多タイの６度目の優勝を狙う尾崎将は５打差ながら５位に浮上したが、５度目の優勝を目指した中嶋常幸（当時登録名中島）はプロとして19度目の日本オープン出場で初めての予選落ちを喫した。
　第３日、伊澤が1つ伸ばして通算６アンダーとわずかに進んで首位を守る中、8打差16位でスタートした田中秀道が６アンダー65をマークして３打差２位に一気に浮上した。８バーディー、２ボギーの攻撃的なゴルフを披露。「練習ラウンドでは70台で回れるかなという感じだった。本音で言えば５００％の出来です」（スポーツニッポン紙より）と、自分でもびっくりの快進撃でプロ初優勝が視界に入った。
　同じく３打差２位に浮上したのが芹沢信雄。大会前に尾崎将が、飛ばなくても曲がらない「芹沢信雄向きのコース」と予想していた通りに上位進出。５番でチップインイーグルを奪ったのがきいた。「飛ばすことが注目されているけど、それが覆されることもあるというのを証明したい」と話した。
　最終日、首位の伊澤はアウトで２つ伸ばしたが、追う側では４打差でスタートした細川和彦が４つ伸ばして２打差に迫った。伊澤はインに入って伸ばせず、14番パー５をボギーにした。細川は15番ボギー、17番バーディーで伊澤に1打差の通算６アンダーで先にホールアウトにした。
　最終18番は472ヤードと距離がある難しいパー４。伊澤は迷わずドライバーで攻め、パーに収めて通算７アンダーで逃げ切った。グリーンサイドで見守っていた尾崎将に肩を抱かれ「ホロリと来ました」（スポーツニッポン紙より）と振り返った。
　プロ７年目の初優勝が公式戦のビッグタイトルは史上３人目（当時）、しかも完全優勝での快挙になった。「思ってもみないタイトルが転がり込んできたのか、それとも自力で取ったのか、よくわからない」（日刊スポーツ紙より）と、少し困惑しながら日本一のタイトルの重さをかみしめていた。
（文責・赤坂厚）

プロフィル

伊澤利光（いざわ・としみつ）
1968年３月２日生まれ、神奈川県出身。8歳からゴルフを始め、日体荏原高から日体大に進学。1986年朝日杯全日本学生、87年日本オープンローアマなどのタイトルを取る。89年プロテスト合格後、米国のミニツアーに挑戦。94年から日本を主戦場とし、95年日本オープンで初優勝を飾った。2001年マスターズで日本選手歴代最高（当時）の４位に入り、アーノルド・パーマーから「キング・オブ・スイング」と絶賛された。同年、国内５勝で初の賞金王。約２億1793万円の獲得賞金は歴代１位。02年に丸山茂樹とのペアでＷＧＣワールドカップに優勝。03年には２度目の賞金王。ツアー通算16勝。

第60回日本オープンゴルフ選手権