優勝カップを掲げる片山晋呉（ＪＧＡホームページより転載）

ドライバーを封印した片山晋呉が永久シードを決める快勝

　会場の古賀ゴルフ・クラブ（福岡県、6797ヤード、パー71）では1997（平成9）年以来、11年ぶり2回目の開催となった。前回の優勝スコアは2オーバー、286ストローク。玄界灘に面するコースは、距離こそ短いが簡単には攻略できない。
　難しい舞台に対して多くの選手は1打目にドライバー以外のクラブを多用してフェアウエーキープを重視する戦略をとった。そんな中、17歳のルーキープロ・石川遼は果敢にドライバーを振り切った。アウトスタートの初日、12番でこの日5個目のバーディーを奪った時点でボギーなしの5アンダー。単独首位に立っていた。14番でダブルボギーを叩いてから失速して結果的には1アンダー、70で2打差の4位。悪くない位置で初日を終えた。
　首位に立ったのは3アンダー、68の片山晋呉とブレンダン・ジョーンズだ。35歳、日本オープン制覇を含めここまで24勝を挙げている片山は石川とは対照的にドライバーを使わなかった。そもそも最初からドライバーをバッグに入れずにプレーしていたのだ。
　スコアの動きも対照的。インスタートで10、11番を連続ボギーとしながら「日本オープンはこんなもの。難しいのは分かっているから」（ＪＧＴＯウェブサイトより）と焦ることなく立て直しての68だった。
　2日目も石川はドライバーを多用した。前半のインで3つスコアを落としたがアウトで2バーディー、ボギーなしと盛り返してこの日は72。通算イーブンパー、2打差3位に順位を上げて決勝ラウンドに進んだ。
　片山は1バーディー、2ボギーの72。6ホールで1パットパーを記録する粘りのゴルフで通算2アンダーは単独首位となった。
　1打差2位はジョーンズ。予選通過ラインは前回の11年前よりも2打悪い13オーバーとなった。
　3日目、首位の片山は終盤崩れかけたが18番でバーディーを決めてこの日72に踏みとどまる。通算1アンダーは2位に上がってきた上井邦浩に4打差をつけての首位だ。
　石川はショットが乱れた。アウトで1打目がフェアウエーをとらえたのは1ホールのみ。5オーバーの41と崩れた。それでもインでは2バーディー、2ボギーと耐えた。通算5オーバーは片山とは6打差に開いたが順位は4位と依然として上位。わずかだが浅見緑蔵が持つ最年少優勝記録（19歳）更新の可能性を残した。
　好天に恵まれた最終日、1万2000人近い観客が詰めかけた。1番でボギーが先行した片山は3番パー5で取り返し、4番以降はすべてパーを重ねた。ドライバーを封印した戦略が功を奏して最終日はフェアウエーを外したのは2回だけ。日本オープン仕様のゴルフを最後まで貫き、ただ1人アンダーパーとなる通算1アンダーで3年ぶり2度目の日本オープンタイトルをつかんだ。
　片山にとってこの勝利が通算25勝目。史上7人目の永久シード権を大舞台で決めて「自分を褒めたいと思います」（ＪＧＴＯウェブサイトより）と声をうわずらせた。
　片山のひとつ前の組で大声援を浴びたのが石川だ。2番ボギーのあと、3、4、7番でバーディーを奪い追撃態勢に入っていた。8番以降はすべてパーで69は最終日のベストスコアタイ。通算3オーバーは片山とは4打差ながら単独2位に食い込む健闘で、大会を盛り上げたもうひとりの主役だった。
（文責・宮井善一）

プロフィル

片山晋呉（かたやま・しんご）
1973（昭和48）年1月31日生まれ、茨城県出身。日本大学時代に日本学生、日本オープンローアマなどのタイトルを手にして1995年にプロ入り。日本タイトル4冠（日本オープン、日本プロ、日本シリーズ、日本ゴルフツアー選手権）を含む通算31勝を挙げている。海外では2001年全米プロと2009年マスターズで4位に入っている。

第73回日本オープンゴルフ選手権