第63回日本オープンゴルフ選手権(1998年)
2024.08.13
優勝カップを掲げる田中秀道(JGAホームページより転載)
田中秀道、松林から神がかり的なショットでつかんだ日本一の座
国内屈指の難コース、茨城県の大洗ゴルフ倶楽部(7160ヤード、パー72)で初めて日本オープンが開催されたのは1998(平成10)年のことだった。10月1日の大会初日、鹿島灘に面するコースは強い雨に見舞われ、グリーンにたまった水を除去する作業を行うなどして進行が大幅に遅れた。その結果、27人がホールアウトできずに日没サスペンデッドとなった。
天候が回復した翌日、第1ラウンドの残りを消化した時点で2アンダー、70の原口日出樹、髙見和宏、田保龍一が首位に並んだ。
続いて第2ラウンドを行い、70で回った27歳の田中秀道が通算2アンダーで単独首位に立つ。1打差の2位に並ぶのは伊沢利光、尾崎直道、謝錦昇の3人。前年覇者のクレイグ・パリー、2年前に勝ったピーター・テラベイネンらが2打差の5位グループにつけた。
3日目に存在感を見せつけたのは42歳の尾崎直道だ。2番パー5で8mのイーグルパットを沈めるなどこの日ベストスコアタイの68を叩き出し、通算5アンダーの単独首位に躍り出た。ここまで25勝を挙げ、永久シードも手にしている尾崎直だが日本オープンは未勝利。悲願の初タイトルへ向け3打のリードで最終日に向かうことになった。
2位はパープレーの72にまとめた田中と、70で回った谷口徹、藤田寛之の計3人。前年1打差で大会6勝目を逃した尾崎将司が5打差の5位グールプに控えている。
最終日は最終組のひとつ前で回る田中がチャージをかけた。アウトで4バーディー、ボギーなしの32をマーク。パープレー、36の尾崎直を交わして首位に出た。
インに入って尾崎直が13番をボギーとし、田中が14番でバーディー。差を3打にまで開く。後続は伸び悩み、2人のマッチレースになっていた。
田中が16番をボギーとして2打差。そのまま難関の18番を迎えた。
ここで田中はティーショットを右の林に打ち込んだ。大洗GCの密集した松林は一筋縄ではいかない。松の幹が体の一部に触れる状態で窮屈なスイングを強いられた田中の2打目は前方の松に当たって跳ね返り、再び林の中に落下した。
今度は、まともにスイングはできるが抜け出す空間は狭い。それでも田中は6番アイアンを手にしてグリーンを狙う。打った瞬間、フェアウエーに向かって駆け出した田中の目に映ったのはグリーンを捕えた自分のボールだった。
30m近い、長い距離を2パットで収めてボギー。神がかり的なショットと見事なパットでもぎ取った価値のあるボギーだった。
田中のプレーを2打目地点で見届けた尾崎直。プレーオフに持ち込むにはバーディーしかない状況で放った右ラフからのショットはグリーン右に外れる。高い砲台グリーンに打ち上げる3打目がカップを通り過ぎた瞬間、田中の大会初優勝が決まった。
大会前週、田中は尾崎直にスイングのアドバイスを乞い、自分のスイングに自信を得て大洗GCに入っていた。その尾崎直を下してのビッグタイトル。尾崎直と握手を交わした田中の目は涙で赤くなっていた。
(文責・宮井善一)
プロフィル
田中秀道(たなか・ひでみち)1971(昭和46)年3月29日生まれ、広島県出身。瀬戸内高校を経て1991年にプロテスト合格。1995年のフィリップモリス選手権で初優勝を飾った。1998年日本オープンなど通算10勝。2002年からは米ツアーにも参戦し、4年間シード権を獲得した。
第63回日本オープンゴルフ選手権
順位 | 選手名 | Total | Round |
---|---|---|---|
1 | 田中 秀道 | 283 | = 72 70 72 69 |
2 | 尾崎 直道 | 284 | = 71 72 68 73 |
3 | 東 聡 | 286 | = 75 72 70 69 |
4 | 谷口 徹 | 287 | = 76 68 70 73 |
5 | 深堀 圭一郎 | 289 | = 76 73 68 72 |
6T | 奥田 靖己 尾崎 将司 小達 敏昭 Craig Parry 髙見 和宏 Peter McWhinney |
290 | = 73 73 73 71 = 72 72 72 74 = 73 71 75 71 = 72 72 74 72 = 70 76 72 72 = 76 71 69 74 |